粘り強い子になる!3つの育て方

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こんにちは。

RAKUTOのにいどめです。

 

面談や送り迎えのちょっとした時など、保護者さまに、

「先生、うちの子ほんとメンタルが弱すぎて…どうしたらいいでしょう?」

と聞かれます(とくに一人っ子の男の子が多いです)。

一人っ子の男の子ではありませんが、わりとすぐにあきらめがちな僕は、

「男の子って…そうですよね(ニコッ)」

と返すようにしているのですが、トレーニングの甲斐あり、以前よりは、多少マシになってきているかなとは思います(おそらく)。

「粘り強さ」や「忍耐力」というのは鍛えられるのですね。

そこで、今回は、『粘り強い子になる!3つの育て方』としてまとめてみました。

 

「ダイエット」「失敗」などの言葉に、ドキッとする方には、

少し耳の痛い話があるかもしれませんが(先に謝っておきますね。ごめんなさいm(_ _)m)

よかったら、参考にしてみてくださいね^ ^

 

 

「粘り強さ」「忍耐力」「意志力」「夢を叶える力」…

いろんな言い方があるかと思いますが、どれも、自分のやりたいことをやっていくために非常に大切な力です。

 

どんなに好奇心やセンスがあっても、すぐにあきらめていては芽は出ません。

何かを始めて、最初はスルスルと成長していたとしても、どこかで必ず成長スピードは鈍り、なかなか成長を感じられないしんどい時期が来ます。

どんなに素敵な夢を思い描いていても、行動が伴わなければ、何も現実にはなりません。

 

大事なのは「続けられるかどうか」なのですね。

 

「粘り強さ」や「忍耐力」「意志力」「夢を叶える力」というと、漠然としているので、ここでは、3つの力に分けてみます。

 

①やる力

②やらない力

③描く力

 

これらを意識して鍛えることで、「粘り強さ」や「忍耐力」がつき、目標達成力というようなものも身についていきます。

 

①「やる力」を鍛える

 

1つ目は「やる力」です。

これは、何かを決めたら、そこに集中することができる力です。

先延ばしや言い訳をせずに、しっかりと目標にとって必要なこと、やるべきことをやっていく力ですね。

 

これを鍛えるには、「毎日やることを決める」「ルーティンを決めて守る」ことが効きます。

その際のポイントは、「きちんとやることを明文化、数値化する」こと。

 

料理で考えるといいのですが、献立のようなものがあり、その分量の通りにつくるから、ちょっと薄い、ちょっと辛いと感じた時に、次回、分量を変えて調整したりすることができます。

 

明文化、数値化し、「基準をつくる」から、できた、できなかったのチェックや傾向の記録、分析ができるようになります。

それがないと、「なんとなく」やった、やっていない、できた、できていない、になってしまうのですね。

 

社会心理学の調査で、

「ダイエットするには、自分の体重をきちんと知って記録すればいい」

というのがあるのですが(これを利用した『レコーディング・ダイエット』というのが、むかし流行りましたね)、なるほどと思い、

 

「気心の知れたダイエットに失敗し続けている友人女性」の何人かに、あ〜なんかダイエット諦めてきた気がするなと感じた時に、失礼を承知で「体重測ってる?」と聞いてみました。

 

すると、おもしろいことに、

 

「最近、体重計に乗っていない」と言ったり、

「体重計を隠して視野に入らない」ようにしていたり、

「体重計の電池が切れている」などと言い出したりしたのですね。

 

「なるほど、社会心理学すごい…!!」

 

とエビデンスとしては少ないですが、納得と思った出来事なのですが、「数字を知る」というのは大事なのですね。

なお、この「体重測ってる?」調査ですが、もれなく、「嫌われる」という特典が付いてきたことはここに書いておきたいと思います。

 

「毎日やることを決める」「ルーティンを決めて守る」

これらは、勉強以外の生活習慣でも決めておくと自然と鍛えられます。

 

僕自身も現在いくつかやっていること、

「くつを揃える」

「毎日トイレ掃除をする」

「朝と夜にストレッチをする」

「1日1冊本を読む」

「1週間に2000字のアウトプットをする」

などがあるのですが、

 

「ちょっとめんどくさいけど、意識してやればできる」というレベルが設定のポイントです。

 

「意志力は筋肉のようなものである」

 

とは心理学者のロイ・バウマイスターさんの至言ですが、

「ちょっとがんばればいける」ということを決めて、続けることで、お子さまの「やる力」は筋肉のように鍛えられます。

 

 

②「やらない力」を鍛える

 

「やらない力」は「自制心」や「大事なことを優先する力」と言い換えることもできます。

 

これらも、「やる力」とは逆、「やらないことを決める」「ルーティンを決めて守る」で鍛えられます。

その際のポイントは、同じく、「きちんとやらないことを明文化、数値化する」こと。

 

「やらない力」を鍛えることで、「やる力」もアップします。

 

また、個人的な話ですが、

1年以上前に、いろんなアスリートの本や栄養の本を読んでいて、思い立ち、

「パンを食べない」

ということに決めました。

 

現在のRAKUTO箕面校の1階には、美味しいパン屋さんがあり、

店長さんに会うたびに「どめさん(そう呼ばれています)、最近、来てくれないじゃないですか〜」と言われるのですが、

パン屋さんを前に「パン食べないようにしてるんですよ」とは言えず、笑顔で「みんなに言っておきますね〜」と言い、心の中で「ごめんなさい…」と唱えております。

 

ただし、「やらないこと」は制限しすぎるとしんどくなってしまうので、「ほどほど」にすることが大事かなと思います。

 

僕も、

「近所の美味しいパスタ屋さんのセットで出てくるバケットはオッケー」

などというゆるゆるな設定にしています。

 

子どもたちには、簡単にできることとしては、勉強をする時は「タイマー」をセットし、

「いまやること、いまはやらないことを決める」、「いまやること以外のもの」や「気の散るもの」を視界に入らないところに「隠す」ということをするように言っています。

 

お菓子を引き出しの中に入れておくだけで、机の上に置いておいたときよりも消費量が「3分の1」になったという結果もあるそう。

 

ぜひ、「ちょっと難しいこと」「ちょっといつもやっていることとちがうこと」など、「やらない力」を鍛えるためにやってみてくださいね。

 

 

③「描く力」を取り戻す

 

「夢見る力は夢を叶える力」だと思っているのですが、

こうなりたいという「目的」を持つことで、ラクな方や、一時的な快楽などに流されそうな時に、スッと元の道に戻って来られたり、苦しい時にあきらめない力が身につきます。

 

またまた、個人的な話になりますが、

高校生のときに「塾の先生」になろうと決めました。

家と学校につづく「第3の場所」としての塾や、そこにいた先生たちがすごく好きで、僕もこんな場所をつくりたいな、こんな人たちになりたいなと思ったのがきっかけです。

 

ですが、一つ、大きな問題があったのですね。

 

「ものすごい人見知り」

 

だったのです。

恥ずかしかったり、人目を気にしすぎて、全然話しをすること(とくに女性と)ができなかったのです。

そんなことでは、保護者さまとお話しできません。その恥ずかしがりやっぷりでは、子どもたちの前に立って授業をすることも危うい…。

 

しかし、塾の先生になることは決めています。

そこで、3つの段階に分け、一つひとつクリアしていこうと決めました。

 

1段階目「人に慣れる」

2段階目「サービスについて学ぶ」

3段階目「自分の理想の場所をつくる」

 

まずは、1段階目、人に慣れなきゃ始まりません。

そこで、塾で教える前、人に慣れる練習として「1年、スーパーで働こう」と決めました。

それも、スーパーの品出しだと、人と面と向かい合わなくていい、冷蔵庫の方を見ておけばいい、夜だと人もそんな来ないだろうと考えました。まだ、レジ打ちさんなどに比べるとハードルが低そうに感じたのですね。

それも、あまり知っている人の来なそうなスーパーという念の入りようです。

なぜか、同じスーパーのおばちゃんたちに可愛がってもらえたのがいい思い出です。

 

2段階目「サービスについて学ぶ」

 

次に考えたのが「サービスについて学ぶこと」。

塾で子どもたちに教えるだけでなく、将来、自分の場をつくることを考え、きちんとサービスについて学ばないといけないなと思っていました。

 

1段階目の「スーパーで人に慣れる」の時期をクリアしたあと、思ってもいなかった素敵なご縁というギフトも得た僕は、ようやく塾で教えることをスタート。

 

と同時に、サービスを学ぶため、最初はホテル(まずはいろんなひとを知るため)、その次、フレンチレストラン(きちんとしたサービスを学ぶため)と期間を決めて働きました。

かなり肉体的にもしんどかった時期ですが、人にはすっかり慣れ、さらに、すばらしい先輩や友人と出会えるという機会に恵まれました。

 

3段階目「自分の理想の場所をつくる」

 

段階を経ていると、ありがたいことに、ご縁で、いまのRAKUTOをやるというチャンスをいただきました。

ここまで来ると、ほとんど奇跡。そして、今になっています。

 

長くなりましたが、「塾の先生になりたい」という「目的」を持つことで、苦しくて諦めそうになるときも「全部そこにつながっている」と思い続けられました。

 

僕自身は、本当にやりたいことをやれるようになりまで10年かかりましたが、子どもたちには、もっと早く、何か自分のやりたいことを見つけ、どんどん夢を叶えていってもらえたらなと思っています。

 

まずは、

「やることを1つ決める」

「やらないことを1つ決める」

(明文化、数値化をお忘れなく^ ^)

「できたかできなかったかを記録」、

習慣になると言われている「21日間続けてみる」

(記録が途絶えても、気にせず、再チャレンジです^ ^)

 

よかったら、やってみてくださいね。

子どもたちが今のすばらしいまま成長し、イキイキした瞳の大人になってくれますように。

 

(新留裕介)

スタンフォードに学ぶ!子どものやればできるマインドを育てる3つのポイント

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こんにちは。RAKUTOのにいどめです。

もうすぐハロウィンですね。

RAKUTO箕面校では、今週からハロウィンウィーク。

子どもたちが毎日、思い思いの仮装をしながらやって来てくれています。

1週間前から準備をし、そんなにたのしみにしていたの!?というくらい喜んでくれている子もいてうれしいばかりです。

教室の壁の一部を、ウォールアートとして自由に飾りつけしていいよ〜と言ったところ、そのために早く来る子や、予想外に男の子もハマっていて、みんなおもしろいな〜とほっこりさせてもらっています。

 

さて、いま、教育界では「GRIT(やり抜く力)」ブーム。

今まで称えられてきた「IQ」より、将来的な成長と成功において大事な才能は、「続けられる才能」だということが、ようやく広まってきました。

とはいえ、子どもたちに、

「将来、何かの世界でプロと言われるものになるのに必要なものって、『才能』と『努力』どっちだと思う?」

と聞いても「才能!」と返ってくることも多く、

失敗したときに、「才能ないねん…」という言葉が聞かれることからも、まだまだ伝えられていないなと感じます。

 

そこで、今回は「スタンフォードに学ぶ!子どものやればできるマインドを育てる3つのポイント」としてまとめてみました。よかったら参考にしてくださいね。

 

【1:親がお手本になる】

同じ失敗をしても「あそこがよくなかったな」と感じる子と「自分はダメだ、これは苦手だ」と感じる子がいます。

「世の中はこういうものだ」という考え方をマインドセットと言いますが、これには2種類あると言われています。

一つは、「人は変わることができる」と考え、大切なのは「自分が成長するかどうか」。努力をいとわない「成長型のマインドセット」。

もう一つは、「人は基本的に変わらないし、大切なのは人からの評価」。結果にこだわりすぎ努力嫌い(努力するのは才能がないからと思うため)。プレッシャーに弱く、人にも批判的な「固定型のマインドセット」。

ホップクラスで1年ほどすると、子どもたちから、チャレンジする姿や、「間違えてもいいんだよ」という他の子への声かけがよく見られますが、このマインドセットの違いはどのようにして作られていくのか?

 

RAKUTO箕面校の保護者さまの中ではおなじみ、これまでにも何度も登場していただいているスタンフォード大学心理学教授のキャロル・S・ドゥエックさんによると、それは、その人が今までにどのような経験をしてきたか、そして、周囲の人、とくに親や教師など、「権威」としての存在である大人が、どのような反応をしてきたかによって決まるそうです。

 

心理学者のバンデューラさんは、子どもには「観察学習」という特性があり、モデルの行動を見るだけでその行動を学習してしまうということを指摘しています。

 

親というのは子どもにとっての「レンズ」のようなものなのですね。

親が「チャレンジすることが大事」「世界は安全で豊かなところだ」「おもしろいところだ」と見ているか、

「失敗しないことが大事」「世界は危険がいっぱいなところだ」「つまらないところだ」と見ているか。そのレンズを子どもも受け継いでいきます。

どんなレンズをつけているでしょうか?

 

【2:すぐれた先生につく】

「お前は果たしてそうなのか?」といきなり自分たちの首をしめていますが(笑)、発達心理学のエリクソンの説では6歳〜12歳は「やればできる」という体験をして「勤勉性」を学ぶ時期になり、学校や近隣にいるひとの影響を強く受ける時期とされています。学校や塾の先生、家族以外で近い存在が果たす役割が大切。

先生やまわりの大人がどんなことを言っているのか、しているのかを見ているのですね。

 

先生というのは、カメラマンのような存在ではないかなと思います。

一流のカメラマンはモデルの魅力を引き出し「私って、こんなにきれいだったんだ!」と気づかせてくれる。その子の最大限の可能性や、思ってもいなかった一面をを見せてくれる。

 

スタンフォード大学といえば、2016年世界大学ランキングで3位(東京大学は39位)、毎年のようにベスト3入りの名門大学ですが、そこに入ってくるのは小さい頃から「才能がある」「君はみんなとは違う」と言われてきた子(「固定型マインドセット」の子)が多いそう。

スタンフォードのような大学に入るまでは、それでよかったかもしれない。

(そうでないと、それだけの成績は取れません)

でも、大学のその先、長い未来の可能性をより引き出すには「固定型のマインドセット」というのはチャレンジや成長の足かせになります。

そこで、先生たちは最初のオリエンテーションで、

「挑戦や失敗は学びのプロセスだ。失敗はスタンフォードの学生でも普通のことだ」

と言うのだそう。

世界の起業家の集まるシリコンバレーの近くに位置するということからも、「前向きな失敗」「経験から学ぶ」「リスクをとる」ことの大事さを伝えられるのですね。

 

ドゥエック教授によると、すぐれた教師というのは、

「知力や才能は伸ばせると信じており、学ぶプロセスを大切にし」

「できる生徒に対してだけでなく、すべての生徒に対して高い基準を設け」

「温かくて度量の大きなひと」なのだそう。

 

「そのままでいい」と、努力しないでいいということを間接的に伝えたり、基準を下げたりするのは、効果がないとおっしゃっています。

僕自身、自らハードルをあげていますが、大丈夫でしょうか…。

 

【3:ほめ方を変える】

「よくがんばったね!すばらしい!」

「今回はうまくいかなかったね。どうやったら次にうまくいくか考えてみよう」

「よくできたね!もう少しうまくできると思ったところはある?」

「これは難しいね。すぐにできなくても気にしなくていいよ」

「もうちょっとがんばってみようか。一緒にやればできるよ」

これらは成長型マインドセットを育てるほめ方と言われています。

一方、

「才能があるね!すばらしい!」

「才能があるから次はきっとうまくいくよ」

「よくできたね!すばらしい!」

「これは難しいね。できなくても気にしなくていいよ」

「向いてないのかもしれないね。君には他にできることがあるからいいよ」

などは似ていますが、固定型マインドセットを育んでしまうほめ方と言われています。

ちがいは、「特性ではなく、努力」、「変わるものをほめているか」。

「やったこと、変化」をほめることが大切です。

 

ほめるというのは、素敵なパートナーを持つようなものです。

ほめ上手なパートナーは、「見た目最高!」ではなく「あれ?髪型変えた?すごく似合ってるね!」など、がんばったところや、変わったところを見つけてくれ気持ちを上げてくれます。(僕も見習っていきたいと思います)

 

注意しなくてはいけないのは、「早くできたね!」や「間違えなかったね!」というようなほめ方。

これらは、「私はスピードを評価する」「私は完璧であることを評価する」というメッセージを相手に伝えていて、「丁寧さ」や、成長するためには欠かせない「チャレンジ精神」を損ねる危険があります。

何気なく、使っていて、ちがうメッセージが伝わっていることってよくありますよね。

もちろん、そんなときも、自分を責めるのではなく、「きちんと気づけるようになった」「まだできていないだけ」と許してあげることをお忘れなく^ ^

上記のようなほめ方、よかったら、お家で練習してみてくださいね。

 

以上、「スタンフォードに学ぶ!子どものやればできるマインドを育てる3つのポイント」としてまとめてみました。参考になれば幸いです。

ほめ上手なひとが増え、笑顔がたくさんあふれますように^ ^

 

(新留裕介)

 

【おしらせ】秋休みにつきまして

こんにちは。

RAKUTO箕面校の新留です。

この度はホームページをご覧いただきありがとうございます。

RAKUTO箕面校は、

10月21日(金)から10月26日(水)まで、

秋休みとなっております。

その間、お電話など通じず、

また、いただいたメールの返信など、10月27日(木)以降となりますが、よろしくお願いいたします。

 

RAKUTO箕面校

どうして地理を勉強するの?と聞かれたらこう答えるだろうなということをお話仕立てで書いてみました。

「先生、地図持ってきたで〜」

「先生、あれ(地理)まだやらへんの?」

と僕自身は昔大嫌い、だったのに今は好きになり、子どもたちにもなかなか人気の地理。

地理って、ほんとに社会に出て役に立つ学問だと思います。

大人になった今だから感じる「どうして地理を勉強するの?」ということをお話仕立てで書いてみました。

よかったら、参考にしてみてくださいね。

(にいどめ)

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***************

 

昔々あるところに一人のかわいい男の子が……

訂正。

今から24年前、兵庫県の尼崎市(あまがさきし)に、動物占いは「人間味あふれるたぬき」の一人の男の子がいました。

 

男の子は、ご多分にもれず勉強が嫌いで、「どうして勉強をするの?」、「学校でやる勉強なんて、大人になって役に立たないじゃん」という誰もが一度は考えたことのある疑問を盾に勉強から逃げていました。

 

連休明け、

いつもより多めに出された宿題をやってこなかった男の子、ゆうすけ君は学校に残り、宿題をやる羽目に。

 

(どうして、こんなことやらないといけないのかな?)

(ぼくは、もっとおもしろい勉強がしたいんだよ)

そんなことをつらつらと考えながら窓の外を見ていると、教室のドアを開ける音が。

そこには、見たことのないスラッとしたメガネの男のひとがいました。

 

(こんなひと、この学校にいたかな……?)

 

そう思っていると、そのスラッとしたメガネの男のひとは、まるで子どものような屈託のない笑顔で、

 

「ゆうすけ君、宿題やってこなかったみたいだね〜」

と言ってきました。

 

「う……ん……そうだけど」

 

(何でそんなこと知っているんだろう? 先生なのかな?)

 

ぼくがそう思っているのを知ってかしらずか、

「僕は先生だよ。ゆうすけ君は僕のことを見たことはないかもしれないけどね」

「そうだったんだ」

「でも、僕はゆうすけ君のことをよく知ってるよ。勉強が嫌いなんだよね?」

 

(なんか、すごい話しやすそうなひとだな〜はじめて会ったのじゃないみたいだ)

 

「ん……嫌いってわけじゃないと思うんだけどね、何でやるのかがわかんないんだ」

 

その男のひと、『自称・先生』は、責めてるというわけではなく、ただ、純粋に、目の前の子の言っていることを聞きたいという感じで、顔をちょっと斜めにしながら耳を傾け、ふむふむと頷いています。

 

「なるほどね。ところで、ゆうすけ君はお寿司は好きかな?」

 

(なんで、いきなりお寿司??)

 

「あっ、なんでお寿司って思ったでしょ? まあまあ、気にしないで。ゆうすけ君はお寿司が好きかなって聞いてるだけだから」

「……うん、好きだよ。たまごとタコが好きなんだ」

「そうか、僕と一緒だね。たとえば、ゆうすけ君が、お寿司がこれからもずっと好きで、将来、お寿司屋さんになりたいと思ったとしよう」

「うーん、お寿司は食べる専門でいいかな〜」

「……た と え ば ね。そして、高校を卒業し、大学は、うーん、行かないことにして、どこかのお寿司屋さんで何年も修行をし、よし、これから自分のお店をつくろうと思ったとしよう」

「守・破・離の『破』だね!」

「……難しい言葉を知っているね。そのとき、ゆうすけ君だったらどこにお店をつくるかな?」

「うーん、駅前の繁華街の一等地かな!」

「……何だか、ゆうすけ君は難しい言葉を知っているし、バブルな雰囲気がすごいね。じゃあ、駅前の繁華街の一等地にお店をつくるとしよう。そういうところは家賃が高いよね、きっと。お寿司の値段はいくらぐらいにする?」

「おまかせのコースのみで2万円からかな! 高い方がいいっていうひともいるからね!」

困惑した表情の先生とは対照的に、ゆうすけ君の顔がだんだんと明るくなってきます。

「……なんだか、人間の心理をよくわかってるね……。うん、そんなひともいるよね。じゃあ、駅前の繁華街の一等地で2万円からのお店を出すとしよう。でも、歩いて10分のところにある武庫之荘(「むこのそう」と読む。阪急電車神戸線にある駅のひとつ)の駅前で2万円からのお寿司を出すお店を出して、たくさんのひとが来てくれるかな?」

「うーん、ちょっときびしいかも……」

「そうだよね。武庫之荘って、閑静な住宅街で、ひともたくさん住んでいるし、なかなか良いところって言われているけど、たぶん、駅前のお寿司屋さんに2万円を出すひとはあまりいないと思うんだ」

「言われてみれば、たしかに……王将とかは、たくさんひとがいるけどね! ぼく、王将の餃子が好きなんだ!」

ゆうすけ君は難しいクイズに出会ったときのように真剣で、ワクワクした表情です。

「それじゃ、自分の夢だったお店をせっかく出してしまっても潰れてしまうよね。じゃあ、『どこに』、『どんなお店』を出したら『たくさんのひとに喜んでもらえるか』、それって、ゆうすけ君の嫌いな社会、『地理』でやっていることとほとんど同じなんだよ」

「えっ! どういうこと?」

「たとえばね、地理の勉強をはじめると、最初に、どこに山があるのか、川があるのか、平野があるのか、『地形』って言われるものだね。そんなことを覚えさせられたりする。ゆうすけ君は、そういうのを覚えるのは好き?」

「ううん、嫌い。つまんないもん」

先生は待ってましたとばかりの表情。

「うん、先生もそう思うよ。そして、『地形』の次は『気候』。風はどう吹くとか、どれぐらい雨が降るとかやるよね」

「うんうん、あれ、ほんと意味がわかんない」

先生はなぜか笑顔。言いたくてたまらないという雰囲気が満々です。

「そして、どんな作物が育つとか、どんなお魚がとれるとか、どんな人形をつくっているのか、とかね」

「そうそう、知らんわって感じ」

「でも、よく考えてみて。『地形』って、『どこに何があるか』だよね。山や川があって、平野があって、身近でいうと、家があって、学校があって……」

「あっ、ほんとだ」

「さっきの『お店をどこにつくる?』って話も、山や川の近くよりは、家とか学校とかひとのたくさんいるところのほうがいいはず」

「たしかに」

「そして、『気候』って、風がどう吹くとか、雨がどれぐらい降るとか……。山に雲が当たると雨が降るから、山の位置と風の吹く方向がわかれば、どこに、いつ、どれぐらい雨が降るか予想できたりする。『風』って吹く向きがある程度決まっているように、『ひと』だって、どっちからどっちによく行くっていうのも決まってたりするよね。ゆうすけ君だって、よく行く公園とか、お菓子屋さんとかって決まっているでしょ?」

「うん、決まってるよ! 野球をやっても怒られない公園ってすごく少ないんだ! そこは、いつも野球好きの子でいっぱいなんだ!」

「そんな子どもたちのたくさん集まる公園の近くに、お菓子屋さんがあったらどう?」

「絶対行く! たくさん子どもがくると思う!」

「そう、『どこに何があるか』と『どういう方向に流れがあるか』がわかれば、『どこで、どんなことをすればいいのか』の予想ができたりする。つまんないって思っている『地理』には、じつは、ぜんぶ『つながり』があるんだ。そして、地理って科目は、『つながり』を見つける練習。それは『将来、大人になったら、どんな風に自分が好きなことをやったらいいのか』ってことを考えたりする練習になるんだよ」

「そうだったのか〜すごいな」

「そうやって、『つながり』を見つけて、まわりにたくさんお客さんのいるお店をなんでかなって分析したり、予想したり、どうなるか観察したりする。そしたら、『こうやったら、いいんだ!』ってのが見えてきたりする。それは、ゆうすけ君が大人になってお寿司屋さんをやるってなったときに、きっと、役に立つよね」

「うん! お寿司屋さんはやらないと思うけどね!」

「……そ、そうか……まあ、いいか……」

「でも、先生。ぼく、社会ってぜんぜん意味がわからないし、勉強しても意味がないって思ってたけど、何だか、すごく身近なものになった気がするよ!」

「そっか〜、それはよかった」

先生はすごくうれしそうです。

「よーし、いっぱい『つながり』を見つけて、がっぽり儲けるぞー!!」

……ゆうすけ君の晴れやかな表情とは対照的に、先生の表情は、また台風前の空のようにどんよりと曇ってしまいました。

 

<<終わり>>

子どもの才能を伸ばすために10歳までに始めたい5つのこと

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前回、記事を書いたところ、たくさんの方に読んでいただいたようで(ありがとうございます!)、その続きを書いてみました。

前回の「特徴編」につづいて、今回は「方針編」とでもいうもの。

よかったら、参考にしてみてくださいね。

 

①型を学び、守る

 

才能には、「能力」「スキル」、「努力することができる」など、様々な形がありますが、どんなものを身につけるのにも、研究し、磨かれていっている「型」があります。

 

「型」というと、「堅苦しい」(ダジャレではありません)というイメージを持たれるかもしれませんが、何かを学習するには、「最適な(と現在考えられている)手順」というのがあり、それは脳科学的にも理にかなっていることがほとんどです。

「型」というと「定石」というものがある将棋が思い浮かびますが、棋士の羽生善治さんは「型」について、

 

「将棋の差し手を決める時の大事な要素の一つに、型の美しさがあります」

「美しい手順がつくり出せた時には、それは強さも兼ね備えています」

「将棋のルールを覚えたての時には、どの形がよい形で、どの形が悪い形かはまったくわかりませんでした。しかし、少しずつこれはバランスのよい形とか、修正のしようのない悪い形とかがわかるようになりました。そして、それと共に上達をしたのです」

 

と成長における「型」の大事さと美しさをおっしゃっています。

 

将棋の「型」の強さを示すエピソードに、「欽ちゃん」で有名な萩本欽一さんが、若い頃、いろんな将棋の名人と呼ばれる方と対戦をし、ハンデがありながらも勝っていたりしたのですが、ある日、今でも現役の棋士である加藤一二三さんと対戦した時に負け、

 

「欽ちゃん、定石を覚えてください。プロは定石以外では負けないですから」

 

とアドバイスをされたそうです。

 

「型」には「無駄のない美しさ」と「強さ」があるのですね。

 

「才能」が磨かれるには、「どんな環境で育っているか?」という部分とともに、「時間の質」と「時間の量」のかけ算で育まれていくものがありますので、できるだけ小さいうちに「時間の質」を上げる「型」を学び始めることが大切です。

 

子どもたちは、

「読解力」や「論理力」、「問題解決力」などの「能力」、

マインドマップを使っての「考え方」や「整理の仕方」、「発想の仕方」、速読などの情報収集の「スキル」、

力がついていくための脳に合った「習慣」を学びますが、その際、「独学」や「自己流」に走らず、先生に言われたことを、素直に守っていくことが大事。

素直にそのままやるのか、何となくやっているかで、基礎が固まり、きちんと積み重なっていくかが決まります。

 

 

②家でも「意図的な練習」をする

 

「能力」や「スキル」、「習慣」は、地味なくり返しでしか身につきません。

そして、そのくり返しも、何となくやっていてはほとんど意味がありませんし、頻度も週に1回や2回などではなく「毎日」のことです。

長年にわたり「超一流」と呼ばれるひとの研究をしている、心理学者のアンダース・エリクソン教授は、「どれだけ知識があっても技能がなければ意味がない」と言い、まず、「知識」(何を知っているか)と「技能」(何ができるか)を区別し、特定の分野で能力を向上させたいと思うひとは、「毎日1時間以上」、「完全に集中して練習する」ことが必要だとおっしゃっています。

そして、「成長の初期段階」、「能力」や「正しい習慣」を身につけていく間、興味ややる気を維持することが何より重要だと言います。

 

この学習の「量」について、有名なジャーナリストのマルコム・グラッドウェル氏が提唱した『一万時間の法則』というものがあります。

これは、「たいていの分野で達人と言われる域に達するには一万時間の練習が必要だよ」というもので、覚えやすく、「定説」と呼ばれるぐらいになっていますが、この説について、エリクソン教授は、

一万時間練習すると、だれでも特定分野のエキスパートになれると思われるが、それには「意図的な練習をすれば」という注がつき、また、それも完全に肯定できるまでの研究結果は出ていないとおっしゃっています。

 

しかし、「意図的な練習」と「時間の量」は大事。

それらを重ねていくことで「習得のプロセス」のイメージとでもいうようなものが自分の中にでき、他のものを学ぶときもこうすればいいのだということがわかってきます。

家や学校、塾だけではなく、家でも、「どの能力、スキルを身につけるか」を考え、「意識して」「毎日一定時間」練習していってくださいね。

 

 

③難しいこと、新しいことをする

 

脳には、身体と同じように適応性(「可塑性」とも言われます)があります。

身体の適応性というと、1980年にヨシダ・ミノルさんという方が、「連続腕立て伏せ」の世界記録10,507回という、どうしてそんなにできるようになるのか意味がわからないデータがありますが、脳も、限界はありますが、大きな負荷をかけるほど、大きな変化をしていきます。

また、脳の適応性は、子どもの方が高いと言われていて、トレーニングの効果も高いです。

 

夏期講習など、通常より長い時間勉強する機会などによく見られるのですが、普段、2時間の勉強に慣れている子が、講習会で4時間、6時間と勉強をすると、夏が終わったときに、普段の2時間の勉強では疲れなくなっていて、「もう、終わり?」と言っている光景をよく見かけます。

通常の授業でも、幼稚園の子たちが、小学校の高学年でやるようなことを2時間など平気で笑顔で勉強している姿を見ると、子どもの可能性は無限だなということを僕自身も確認させてもらっています。

 

「インターリーブ」といい、練習では古いものをくり返すだけでなく、新しいものを混ぜるといいことがわかっていますが、新しいものを学ぶことで「違いを見分ける力」もつきます。

研究では、すでにできるようになっているものの練習を続けるより、新しい能力を獲得する方が、脳内の変化を引き起こすのに効果的であることもわかっています。

 

できることを続けるだけでなく、「望ましい困難」とでもいうような、自分にとって少し難しい(ここどポイントで、難しすぎると「フロー」という集中状態に入れません)、自分の限界を広げる、脳のなかに新しいつながりをつくり、脳を変えるための負荷をかけていくことが大事です。

 

もちろん、ただ難しいことをやればいいのではなく、長期的な目標から逆算した小さな具体的なステップになるものを、全神経を集中させ行い、どの部分ができていて、どの部分がまだ未熟かを教えてくれるフィードバックがあるといいです。

 

 

④学習、実践、復習、練習のサイクルをつくる

 

「息をするように勉強しようね」と子どもたちによく言いますが、勉強するということを特別なことではなく、普通のこととしてほしいなと思います。

よく伸びている子は、ただ、毎日勉強をしています。

難しいと言いつつも、できないことを自分がダメだからと思わず、今はまだできないだけと淡々とやっています。

息を「がんばって吸うぞー!吐くぞー!」と思うひとは(おそらく)いないでしょうし、息を「失敗した!」と思うひとも(おそらく)いないと思います。それと同じように、ただ、生活のリズムの一つとして、自然とやっていて、そこには力みも、ムリもない。

 

NLPでは、学習には4段階のプロセス、

「①無意識的、できない」「②意識的、できない」「③意識的、できる」「④無意識的、できる」があると考えられているのですが、

この②の段階、意識的にやっているのだけれども「できない」というときにはストレスがたまります。③の「できる」ようになってくると楽しみも感じてきますが、その段階に行くまでは、ちょっとしんどいですが、意識した、地道な練習が必要です。

 

学習習慣のない子、やり遂げた経験の少ない子は、この段階に行くまでに、「おもしろくない」「やめたい」と言い出すこともありますが、この裏には、できない自分に向き合いたくないだけということもあり、親やまわりが、その表面的な言葉に踊らされることなく「やめさせない」ということが大事になってきます。

残念ながら、うまくいくことばかりではなく、失敗や落ち込むことなども起こります。

そのときに、子どもが「やめたい」と言っても、自分でやると決めたからには、一定期間、どのレベルまでという区切りに到達するまでは続けさせることが大切です。

 

心理学者のベンジャミン・ブルームさんが、さまざまな分野のエキスパートを集め、その子ども時代を調べる研究を実施したところわかったのは、

「未来のエキスパートたちは、幼い頃、やめさせないように親がさまざまな手を尽くしていた」ということでした。

スランプに陥ったり、イヤなことがあったり、病気やケガなどで練習できないことがあっても、「やめたければやめてもいいが、まずは元のレベルに戻るまで練習すること」というようなことを言っていたそう。

愛情と自由を与えることと同時に、責任や限度をきちんと示すことが大切なのですね。

 

一つの目安として、「1年以上の継続」、「その間に進歩していること」というのがあります。

さらに、これに、「2年以上の継続」、「1週間当たりの時間、頻度を上げる」ということを加えると、より将来的な成功の確率が高いという結果もあります。(「やり抜く力」が育っているので当然といえば、当然なのですが)

一度、サイクルができると楽になりますし、安定感も出てきます。

よかったら、続ける期間などの目安の参考にしてみてくださいね。

 

⑤難しいことをたのしむ心を身につける

 

いよいよ、最後です。

自分の限界を超える練習は、楽ではありませんし、自分の弱点に気づかされる、向き合わされることもあり、楽しくなかったりもします。

「よくできる」(と言われている)子にも、できないことはたくさんあり、できそうでできなかったことに「くそー!」と悔しさをあらわにしたり、悔しさに涙を流したりしながらもしています。

でも、全体的にたのしそうで、ニコニコしています。

 

それは、何かを発見する感覚や、新しい自分、新しい現実に出会う創造的な感覚(「フロー体験」と呼ばれるもの)を今までに経験していることや、きっと、「いつか、自分はできるようになる」ということを心のどこかで知っていたりもするのだと思います。

ひとは働いているときに、テレビを見ているときの約4倍のフロー体験を得ているという研究もあるように、働く、子どもたちにとっては、勉強するということは、つらいこともあるかもしれないけれど、気持ちいいものでもあります。

 

それを体感として知っている。

そうなると、しめたもの。成長が加速します。

上りのエスカレーターに乗ったように、自然と力がついていきます。

 

そんな、高い意欲、「自分はやりたいからやる」というものと同時に、

子どもたちに、間違えてもいいという「成長思考」、これからやっていくなかで自分はできるようになるという「楽観主義」が育まれるようなサポート体制がたくさんあるといいなと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

たくさんの子どもたちが、成長するおもしろさを感じられますように^ ^